民集 第6巻4号414頁 最高裁判所第三小法廷昭和27年4月15日判決

裁判要旨

自作農創設特別措置法上の住所と認められない一事例
大阪において十数人の雇人を使用して金融業等を営む株式会社を経営し、大阪府豊中市所在の同人次男宅から右営業所に通勤し、妻も次男宅に同居しており、兵庫県津名郡a町には月二、三回数日間帰るにすぎない者は、同町において主要な人々を招いて帰郷挨拶の宴会を催したことがあり、同町で配給物資の配給を受け選挙権を持ち町民税を納めていた事実があつても、同町に住所を有するものと認めなければならないものではない。

主文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士南利三上告理由について。

論旨は要するに本件買収計画当時上告人の住所は兵庫県津名郡a町にあつたと主張するに帰する。

生活の本拠を以て住所と解すべきことは所論のとおりであるけれども、原判決の確定するところによれば上告人は大阪市において十数人の雇人を使用して金融並に建物売買業を営む株式会社D商会を経営し、大阪府豊中市所在の同人次男宅から右営業所に通勤し、妻も右次男宅に同居しており、a町には月二、三回数日間帰るだけである。其の他原判決の確定する各般の事実に基き原審が上告人の生活の本拠は前記豊中市にあつたものと認めたのは違法でない。上告人が昭和二一年一〇月a町の主要な人々を招いて帰郷挨拶の宴会を催し、同町で配給物資の配給を受け、選挙権を持ち、町民税を納めていた事実も原判決の確定するところであるけれども、住所所在地の認定は各般の客観的事実を綜合して判断すべきものであつて、これらの事実があつたからと言つて、同町に上告人の住所があるものと認めなければならないものではない。もとより論旨もいうように特定の場所を特定人の住所と判断するについて、その者が間断なくその場所に居住することを要するものではなく、又単に滞在日数の多いかどうかによつてのみ判断すべきものでもないけれども、所論のような客観的施設の有無によつてのみ判断すべきものでもない。要するに原判決の確定した事実に基いて上告人の生活の本拠を考えるときは原判決が上告人の住所を豊中市にあつたものと判示したのは相当である。論旨はその他上告人の住所がa町にあつたものと認めるべき事実についてるる述べるけれども、原判決の認定しない事実又は認定に反する事実に関する主張は採用することはできない。

以上説明するように本件上告は理由がないから民訴四〇一条、九五条、八九条に則り裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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