DV・ストーカー被害者の住民票や戸籍を閲覧交付制限する方法
配偶者からDV(家庭内暴力)・ストーカー行為・児童虐待などを受けている被害者の方は、「住民基本台帳事務における支援措置申出書」という申請によって、配偶者が住民票などの閲覧しようとしても、「不当な目的・相当と認められないもの」として、拒否することが可能になります。
DV等支援措置の対象者
DV等の支援措置の対象者に関しては、法令で以下のように定義されています。
- 配偶者暴力防止法第1条第2項に規定する被害者であり、かつ、暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれがある方
- ストーカー規制法第7条に規定するストーカー行為等の被害者であり、かつ、更に反復してつきまとい等をされるおそれがある方
- 児童虐待防止法第2条に規定する児童虐待を受けた児童である被害者であり、かつ、再び児童虐待を受けるおそれがあるもの又は監護等を受けることに支障が生じるおそれがある方
- その他 1.から 3.までに掲げる方に準ずる方
難解に思えてしまいますが、要約すると以下が対象になります。
また、対象者と同一の住所の方についても、対象者と合わせて、DV等支援措置を求めることができます。
例:子供が児童虐待の対象の場合、同一住所の家族も対象になります。
何を制限できるのか
DV等の加害者からの以下の請求を制限する(拒否する)ことができます。
- 住民基本台帳の一部の写しの閲覧(住民基本台帳法第11条、第11条の2)
- 住民票(除票を含む)の写し等の交付(住民基本台帳法第12条、第12条の2、第12条の3)
- 戸籍の附票(除票を含む)の写しの交付(住民基本台帳法第20条)
現在と過去の住民票も、住所履歴が記載されている戸籍の附票についても、DV等の加害者が閲覧と取得ができない状態にすることが可能になります。
これによって、住民票等から住所履歴を辿り、自宅やその付近に加害者が現れることを防ぐ、1つの手段になります。
DV等支援措置の開始までの流れ
支援措置を受けるための手続きの流れは、以下のようになります。詳しくは、お住まいの市区町村にお問い合わせ下さい。
- STEP1支援措置の申請被害者が住民票と本籍のある自治体に「住民基本台帳事務における支援措置申出書」を提出します
- STEP2自治体の確認依頼を受けた自治体は、既にDV等の証拠書面がある場合はその提出を求め、証拠書面がない場合は支援の必要性を以下の機関に意見を確認しますDV等の証拠書面 ・裁判所の発行する保護命令決定書の写し ・ストーカー規制法に基づく警告等実施書面等DV等の被害の確認機関 ・警察 ・配偶者暴力相談支援センター(女性相談所) ・福祉総合センター ・児童相談所等の相談機関 ・民間の被害者支援団体 ・シェルターを設置運営する法人 ※申出書に相談機関等の意見を記載する場合、申出者が相談機関等に相談等をする際に申請書に記載してもらう方法や、市区町村から相談機関等に対し申請書への記載を依頼する方法等が取られます。
- STEP3確認結果のフィードバック自治体は支援の必要性の確認結果を依頼者に連絡します。また、関係市区町村への申出書転送が行われます
- STEP4閲覧交付制限の開始加害者である配偶者等による住民基本台帳の一部の写しの閲覧や「住民票の写し」や「戸籍の附票の写し」といった被害者の現住所が記載される証明書の交付等について、制限がかかり、転出先の住所等を加害者である配偶者等が知ることが出来なくなります
- STEP5支援措置の期間DV等支援措置の期間は、確認の結果を申出者に連絡した日から起算して1年になります
- STEP6支援措置の延長DV等支援措置期間終了の1か月前から、延長の申出を受け付け、延長後の支援措置の期間は、延長前の支援措置の期間の終了日の翌日から起算して1年になります
支援措置の効果
支援措置決定し、支援が実施されると、以下ような取扱いが行われます。
加害者からの交付請求を制限
加害者からの以下の閲覧や交付請求が制限されます。
また、 代理人や郵送での請求は受付られなくなり、被害者本人が住民票などの交付を受ける場合も、限定された書類(写真が貼付された公的機関発行の身分証明書やマイナンバー)を提示することになり、本人確認がより厳格になります。
- 住民票の写し(現住所地)
- 住民票の除票の写し(前住所地)
- 戸籍の附票の写し(現本籍地)
- 戸籍の附票の除票の写し(前本籍地)
- 住民基本台帳の一部の写しの閲覧(支援対象者の記載の消除)
- 住民票記載事項証明書(現住所地)
- 印鑑登録証明書(現住所地)
- 各種税証明(現住所地)
暴力団関係者からの閲覧制限を行う方法
暴力団関係者・反社会的勢力・犯罪加害者などが、正式な債務があるように見せかけて住民票の開示や発行を請求し、新住所を突き止めようとしている場合、情報を非開示にさせることはできるのでしょうか。
通常、金銭消費貸借契約書やローン申込書等の写しと、第三者の住民票を取得するにたる正当な理由を明示されてしまうことで、住民票や住民票の除票などは第三者に交付される可能性があります。
また、住民基本台帳の閲覧制限の前提となる「支援措置」を受けようとする場合も、支援措置はそもそもDV・ストーカー・児童虐待といったケースが対象であることと、配偶者や特定のストーカーの氏名があれば制限処置が可能ですが、暴力団という幅広い概念での規制は難しいと考えられます。
但し、警察に相談し、警察が必要と認めた場合は、支援措置を受けられる可能性がありますので、一度警察や全国暴力追放運動推進センターへ相談をした方がよいと思われます。
全国暴力追放運動推進センターへの相談で解決した事例
以下、実際に暴力団関係者からの暴力を未然に防ぐために、閲覧制限の支援を受けることができた事例になります。
《事例10「県・市」当局への働きかけにより、暴力団離脱者の住民登録における「閲覧等の禁止」支援措置を取り付ける》
<就労・住定には「住民登録」が前提、「閲覧」により発見される不安>
九州A県に本拠を置く、B会系暴力団C組員(21歳)は、暴力団組織からの離脱を決意(少年院退院後1年2月)し、A県G市から婚約者とともに身を隠しモーテル等宿泊所を転々とした。東北D県E市内に就労と居住先を探す段階でD県暴追センターに相談、支援を求めた。
C組員は、就労契約とアパート住定に伴う賃貸借や就労に伴う契約には「住民登録」をしなければならず、住民登録をすることによる所在の判明とB会系暴力団追手によるリンチ等の身辺の危険を極度に恐れていた。
<閲覧等の禁止支援措置を検討>
D県暴追センターで検討したところ、「配偶者暴力防止法」及び「ストーカー規制法」による「DV及びストーカー行為」の被害者と同様に「住民基本台帳の閲覧等の制限」ができるものと判断、支援をすることとし、D県担当課及びE市役所に対し支援措置の必要性を具体的に説明し、協力を要請した。
<関係県連携による支援措置の実現>
その結果、C組員の前住所地のA県G市役所の協力とD県警察の意見書を取り付ければ実施できる旨の回答を得た。D県暴追センターは、A県暴追センターを通じてG市役所にその旨要請、同市役所の協力とD県警察作成の意見書をE市役所へ提出、「住民基本台帳の閲覧等の制限」措置が決定した。離脱したC組員は、その後定住、就職を果たし平穏に暮らしている。
<教訓事項>
D県暴追センターにおいて、配偶者防止法、ストーカー行為等の規制等に関する法律に着目し、住民基本台帳の閲覧等の制限について「ドメスティック・バイオレンス及びストーカー行為等の被害者」と同様の措置が取れるものと前向きに検討をなし、関係する県及び市当局に対して粘り強く説明支援を要請したことが功を奏した。
参考:https://www.zenboutsui.jp/iken/center/center01.html https://www.zenboutsui.jp/iken/center/center03.html
本人通知制度の利用
加えて、住民票の閲覧制限ができない場合でも「本人通知制度」と呼ばれる、第三者が住民票の写しを取得した時に請求者などの情報を本人へ通知する制度を実施している自治体もあるため、こちらの設定をすることで、早期に誰が取得したかを認識することが可能です。
住民基本台帳事務における支援措置申出書
https://www.soumu.go.jp/main_content/000386693.pdf参考リンク及び資料
(1)住民基本台帳(他人の住民票)の閲覧方法、理由、制限、禁止などを教えて下さい。
(2)【ニュース】住民票閲覧交付制限、性的虐待児童虐待にも適用へ(DVストーカーに加え)
(3)【宇都宮】DV、ストーカー行為等の被害者を保護するための支援措置の参考資料
(4)【宇都宮】DV等の被害者の住所記載がある戸籍の記載事項証明書に配慮を求める申入の参考資料
(5)【札幌市】DV、ストーカー行為等の被害者を保護するための支援措置の参考資料
(6)【東京都】配偶者暴力被害者支援ハンドブック
参考資料:総務省
配偶者からの暴力(DV)、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の方は、申出によって、住民票の写し等の交付等を制限
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/daityo/dv_shien.html
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