何故、不動産屋や金融機関は、引越し前に住民票移動をさせるのか
A.登記の登録免許税を安くするため、融資制度が実務と矛盾していること、再度不動産の登記内容の変更をせずに済ますためです。そのため、実際の引越しの1ヶ月以上前に、住民票の移動がよく行われています。
原則論からすれば、問題がありますが、長期的に続く問題ではないので、役所の実務では、現状暗黙的に認めています。この問題は、長年続いている住民票の移動に関する矛盾の一つです。住宅金融公庫などの金融機関の手続き上の原則が、実際の不動産の取引現場の実情とかみ合っていないことが原因(融資前に住んでいないのにそこに住んでいるとする住民票を渡さなければならない)です。住民票の移動に関する脱法的利用者が増えないようにするための原則維持策だとは思いますが、一般市民の皆様に「住んでないのに、住んでます」と嘘をつく後ろめたさを感じさせないように、何か修正規定を考えて欲しいと思います。
登記の登録免許税を安くするため
通常、新築マンションや中古住宅の所有権は業者が持っています。
※ 業者:販売会社や建設業者
その所有権を業者から購入者に移す(登記)が必要なのですが、その際、登録免許税がかかります。
注意しなければならないのは、現在その登録免許税に軽減措置(評価額の2%から1%と半額になります)があり、自己居住用の住宅にしか(その新居と住民票の住所が合致していないと)適用されない点になります。
尚、住民票を移さずに、この登録免許税の軽減措置を受けることも可能で、各市区町村役所から交付される「住宅用家屋証明書」が必要となります。
融資制度が実務と矛盾
(1)金融機関
住宅ローンの目的は、「低い利子での融資を、融資の申込者本人が住む家に対して行う」ことになります。そのため、融資の開始時に、融資の申込者本人がそこに住んでいなければならないというルールが生まれました。そのため、金融機関は、その住宅にローンを借りる人が住むという確認のため、融資の申込者本人の新居での住民票を求めてくるのです。
(2)住宅の売主
住宅の売主は、金銭消費貸借契約(金融機関と締結する住宅ローンの借り入れについての契約)が行われない状況で、新住所に買主を引越しさせるということはまずしません。
(3)役所
住民票はその自治体の住民であるという証しですから、当然引越しを行わないと、住民票の移動はできません。
(4)矛盾
・ローンを組まないと、家を買えない
・家を買わないと、家に住めない
・家に住んでいないと、住民票移動が出来ない
・住民票移動ができないと、ローンを組めない
このような問題が生まれるため、結果、買主が引越しをしたことにし、住民票を移動し、金銭消費貸借契約を結ぶというのが普通に行われています。役所も事情はわかっているようで、引越しが行われているかどうか、いちいち調査したり調べたりはせず、住民票を移動させるときに念のため「引越ししましたか?」と聞くだけになります。
不動産の登記内容の変更
新居に住民票移動せずに登記をすると、旧住所のままの所有権の登記がなされます。そのため、以下のような余計な手続きや変更登記(司法書士への余分な手数料が発生)をしなければならないことがあります。そのため、表示登記の前に、住民票移動を行ったほうが後々楽ができます。
(1)今回購入した新居を売却する場合
売却時の所有権移転登記の際に旧住所と新住所(新居の住所)との繋がりを証明する書類(戸籍の附票か住民票)を用意しなければならず、少し手間がかかります。
(2)所有者が死亡した場合(相続)
所有者が死亡し、所有権の移転登記を相続人に変更する際に手間取る可能性もあります。
(3)抵当権設定登記の際
表示登記や保存登記の際に旧住所で申請した場合、抵当権設定登記時に新住所となっていた場合に、表示登記の住所も変更されることもあり、その際に余計な手数料を司法書士に取られる可能性もあります。
コメント