アルバイト採用先・パート勤務先に住民票や戸籍の提出は義務ですか。

アルバイト採用先・パート勤務先に住民票を提出すべきか判例/法令/用語解説
アルバイト採用先・パート勤務先に住民票を提出すべきか

バイト先・パート先に住民票を提出すべきか

A.採用時にどのような書類を提出させるかは、企業の裁量の範囲であるため、今後、業務を円滑に進めることを考えると、提出拒否はしないほうがいいと思われます。

戸籍謄本・住民票など本籍が分かるものを提出させてもいい法的根拠はあるのか

企業側として、住民票の提出を求める理由

従業員が企業に虚偽を報告し、企業側が罰せられる可能性があったりもしますので、法令を遵守するため、会社を守るために提出を求めていると考えて下さい。
企業側として、住民票の提出を求める主な理由は以下になります。

1.身元がはっきりしている人を採用したいこと
 パート・アルバイトの住所に虚偽がないか居所を確認するためにも、住所の確認をすることは有効です。
また、パート・アルバイトは住民票に記載されている住所と現住所が異なる場合が多く、住民票の住所が実家になっている場合が多々あります。パート・アルバイトとの間でトラブル(窃盗・突然来なくなる)が起きたときに、本人と連絡が取れなくても、家族と連絡がつくことで、トラブル解決の糸口になります。
2.満18歳未満の年少者を雇う場合には、年齢確認書類を備え付けるように労働基準法で規定されているため、18歳未満でないかの確認になること
3.従業員が日本人と偽っており、ビザの切れた外国人であった場合、企業側が罰せられる可能性があること
4.扶養家族の手続き「扶養控除申告書」等の作成の際に、家族を確認できること
5.労働基準法で人を雇用する際に、企業側が作成しなければならない「労働者名簿」の記載項目の中に年齢と住所を記載する項目があるため、そこを正確に把握したいこと
6.通勤経路(交通費)の確認のため

本籍の記載がない住民票記載事項証明書

住民票には本籍など採用に必要の無い項目も含まれておりますが、「住民票記載事項証明書」という住民票に記載されている内容を絞って、証明できる役所が発行する証明書があります。
昨今、個人情報保護法との兼ね合いにより、必要以上の個人情報は収集しない方針の企業が多くなったため、最近では、「住民票記載事項証明書」の提出を求める企業が多いようです。

対応方法

実は、担当者の知識が乏しく、「住民票の写し」の提出を求められていた場合でも、本籍等の記載がない「住民票記載事項証明書」でいいケースもあるかもしれません。個人情報の提出に抵抗のある方は、一度、関係を害さないようであれば、勤務先に、「住民票提出するのは構わないが、どうのような目的で収集するのか。本籍の記載がない住民票記載事項証明書ではだめなのか。」と聞いてみてもよいかもしれません。 

尚、会社に勤めを行う場合、納得の行かないこと・理不尽に思うことが、多々あると思われます。会社との関係を円滑にするためにも、理由はともかく、「会社の決まりだから守る・従う」といった素直さも、入社前の心得として認識しておくことも大事なことと思われます。

新入社員・アルバイトに住民票や戸籍謄本の提出を義務付けてもよいか


A.本籍地などの不要な個人情報が含まれている「住民票や戸籍謄本」の提出を義務づけることは避けるべきと思われます。

 貴社の採用・入社手続き上、住民票や戸籍謄本が本当に必要か見直すことからはじめて下さい。
 また、「住民票記載事項証明書」という住民票に記載されている内容を絞って、証明できる役所が発行する証明書がありますが、こちらで、本人の年齢や履歴書の住所等に相違ないことを確認するなど、必要な確認事項を賄えないかも確認してみては如何でしょうか。

企業の評判のため・公平性を示すため

 人を雇用した場合、職業安定所や労働基準監督署、社会保険事務所など入社時に提出しなければならない書類は色々ありますが、それらの事務手続きに戸籍謄本や住民票を必要とするものはなく、「住民票記載事項証明書」の内容で十分であるはずです。

 貴方の企業が、住民票や戸籍謄本の提出を義務づけることで、「差別的な意図(=差別を推進している企業)」を感じさせることにもなりますので、避けることが望ましいと考えれます。
 これは、戸籍謄本や住民票に記載されている国籍や本籍等の事項によって労働基準法第3条の「均等待遇」に反する取扱いが行われる恐れがあるとされているためです(近年の同和問題や部落差別の観点から、本籍地の記載を求めないようにとの行政の指導が行われています。)。従業員の採用に当って、労働基準監督署や公共職業安定所等の官公庁へ戸籍謄本や住民票の提出を行うことはありませんし、また、このような書類の提出を求める企業には「何か差別的な考えがあるのではないか?」と、従業員の憶測を呼びかねませんので、よほどの事由が無い場合には、これらの書類の提出を求めない方が望ましいでしょう。
 どうしても、入社の際に確認する必要がある場合は、入社時に一律に提出させるのではなく、必要となった場合に本人の同意を得て提出してもらうという方法をとることが望ましいと考えれます。

結論として

 厚生労働省告示(平成11.11.17 第141号)によれば、本籍や出生地等に関する個人情報を収集することを原則禁止していることもありますので、本籍地などの不要な個人情報が含まれている「住民票や戸籍謄本」ではなく、不要な項目を削った「住民票記載事項証明書」の提出を求めるようにしたほうが最善と思われます。

参考リンク

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