最判昭和41.6.23 民集 第20巻5号1118頁 署名狂やら殺人前科事件

判例
事件番号昭和37(オ)815
事件名名誉および信用毀損による損害賠償および慰藉料請求
裁判年月日昭和41年6月23日
法廷名最高裁判所第一小法廷
裁判種別判決
結果棄却
判例集等巻・号・頁民集 第20巻5号1118頁
原審裁判所名東京高等裁判所
原審事件番号昭和34(ネ)359
原審裁判年月日昭和37年3月15日
判示事項公共の利害に関する事実の摘示と名誉毀損の成否
裁判要旨名誉毀損については、当該行為が公共の利害に関する事実に係りもつぱら公益を図る目的に出た場合において、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、その行為は、違法性を欠いて、不法行為にならないものというべきである。
参照法条民法710条
全文  最判昭和41.6.23 民集 第20巻5号1118頁
 参考ファイル
 http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57744
 https://ja.wikipedia.org/wiki/署名狂やら殺人前科事件

主文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理由

 上告代理人田村恭久の上告理由第一点について。

 民事上の不法行為たる名誉棄損については、その行為が公共の利害に関する事実に係りもつぱら公益を図る目的に出た場合には、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、右行為には違法性がなく、不法行為は成立しないものと解するのが相当であり、もし、右事実が真実であることが証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、右行為には故意もしくは過失がなく、結局、不法行為は成立しないものと解するのが相当である(このことは、刑法二三〇条の二の規定の趣旨からも十分窺うことができる。)。

 本件について検討するに、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)によると、上告人は昭和三〇年二月施行の衆議院議員の総選挙の立候補者であるところ、被上告人は、その経営する新聞に、原判決の判示するように、上告人が学歴および経歴を詐称し、これにより公職選挙法違反の疑いにより警察から追及され、前科があつた旨の本件記事を掲載したが、右記事の内容は、経歴詐称の点を除き、いずれも真実であり、かつ、経歴詐称の点も、真実ではなかつたが、少くとも、被上告人において、これを真実と信ずるについて相当の理由があつたというのであり、右事実の認定および判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、十分これを肯認することができる。

 そして、前記の事実関係によると、これらの事実は、上告人が前記衆議院議員の立候補者であつたことから考えれば、公共の利害に関するものであることは明らかであり、しかも、被上告人のした行為は、もつぱら公益を図る目的に出たものであるということは、原判決の判文上十分了解することができるから、被上告人が本件記事をその新聞に掲載したことは、違法性を欠くか、または、故意もしくは過失を欠くものであつて、名誉棄損たる不法行為が成立しないものと解すべきことは、前段説示したところから明らかである。

 原判決は、その判文中にこれと異なる説示をした部分がないでもないが、本件記事の新聞の掲載について、被上告人の不法行為の成立を否定しているので、結局、原判決の判断は、正当というべきである。

 なお、所論中には、本件記事が公明選挙の啓蒙に名をかりて上告人に対してなされた人身攻撃である旨の主張もあるが、右は原判決の認定しない事実を前提としてこれを非難するものであつて、採るを得ない。

 所論は、結局、排斥を免れない。

 同第二点について。

 原判決は、国会議員ないしその候補者については、その適否の判断にはほとんど 全人格的な判断を必要とし、所論の事実もその適否の判断に関係のある事項であつ て上告人の前科に関する本件記事が真実である以上その事実の公表は許される旨判 示しているのであり、当審も上告理由第一点において判示したように、右判断を正 当と考える。所論は、独自の見解に立ち、原判決を攻撃するものであつて、採用し がたい。

 なお、所論中憲法一四条違反をいう点は、違憲に名をかり実質は原判決の法令の 解釈の違法を主張するにすぎず、原判決の判断の正当なることは前段説示のとおり であつて、この点の主張も、採用しがたい。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の通り判決する。

最高裁判所第一小法廷
 裁判長裁判官 長部謹吾
 裁判官 入江俊郎
 裁判官 松田二郎
 裁判官 岩田誠

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