再婚後の新しい配偶者は、戸籍に前妻(前夫)の名前が残っている場合、不快感を持つということを良く耳にします。
戸籍という書面上の些細なことかも知れませんが、場合によっては、新しい配偶者に不快な思いをさせないためにも、戸籍から離婚歴を消す手段が有効かもしれません。
このページではその方法を解説いたします。
戸籍謄本から離婚歴 (×バツ印) を消す方法
戸籍から離婚歴や前妻を消す方法は、「転籍」と「分籍」の2つの方法があります。こちらは、法的に問題がある手続きではありません。
戸籍にどのように離婚の事実(×バツ印)が記載されるのか
男女が結婚し、婚姻届を出すと、一方が筆頭者、もう一方が配偶者になって夫婦の戸籍が作成されます。
電子化される前の縦書きの戸籍(改製原戸籍)においては、離婚すると配偶者は除籍され、名前の上に大きな×印が記載されていました。
名前自体は消されずに、筆頭者の戸籍には誰といつ結婚したという記録が残ります。
現在では、電子化された戸籍には×バツ印は記載されず、「除籍」と記載されますが、離婚経験がバツイチ、バツニと言われているのも、この過去の戸籍の×印に由来しています。
転籍の方法
本籍地を移すことを転籍といい、転籍は役所に転籍届を出すだけで、新たな本籍地で戸籍が作られることになります。
また、届け出を行う役所は、本籍地、転籍地、住民票のある地のどこでも構いません。
そして、本籍地は生まれた場所、育ち所縁のある場所、住んだことのある場所など関係なく、日本国内であればどこでも自由に選ぶことができ、皇居を本籍地に選ぶことも可能です。
離婚後、筆頭者でない女性は除籍される
男性が戸籍の筆頭者となっている場合、女性は離婚届を出すと、男性の戸籍から除籍され、両親の戸籍に戻ることになります(これを「復籍」といいます)。
尚、戸籍の筆頭者である男性は除籍されず、身分事項欄に「○年○月○日 妻 花子 と協議離婚(若しくは調停離婚 or 審判離婚)」のような離婚の事実が記載され、筆頭者の名前はそのままになります。
以前の戸籍(改製原戸籍)の場合
戸籍が結婚前の状態に戻るわけではなく、結婚し両親の戸籍から抜けたとき、親の戸籍には、子である自分の名前の部分には×印がつけられています。
その×印の記録は消えることはなく、戸籍の末尾に新たに自分の名前が追加されることになります。
そのため、離婚して戻ってきたことが一目でわかってしまう状態であり、まだ、離婚歴は戸籍から消えていません。
現在の電子化された戸籍の場合
男性が戸籍の筆頭者となっている戸籍の妻の欄部分は、妻の戸籍の移動先が記載され、妻の名前欄の前に四角の枠で囲われた「除籍」という文字と記載されます。
(婚姻前の戸籍に戻る場合)
「令和〇年〇月〇日 夫〇〇と協議離婚届出△△戸籍に入籍につき除籍」
(新戸籍を作る場合)
「令和〇年〇月〇日 夫〇〇と協議離婚届出同日□県□市□町□丁目□番□号に新戸籍編成につき除籍」
そして、両親の戸籍に戻るか、新しい自分の戸籍を作るかを選択することになります。
転籍で離婚歴は消える
【1】両親の戸籍に戻った後、住所を変更される際(住民票の手続き)などに、本籍地もどこか適当なところ(他の市町村)に移してください。
移動させた新しい本籍地の戸籍簿には、離婚歴は引き継がれません(戸籍法施行規則第37条)ので、離婚歴がない戸籍になっています。
つまり、自分の戸籍内にある離婚した相手についての記載や、親の戸籍内にある結婚前の自分についての記載が丸ごと消えることになります。
【2】もし、貴方のご希望の本籍地(元のご両親がいる市町村等)に戸籍を戻したければ、数ヶ月してから移してください。こちらにも離婚歴は記載されることはありません(元の市町村に戻られたときに、離婚歴がまた見えるようになることはありません)。
※男性のケースですと、両親の戸籍には戻りませんが、女性のケースと同様に【1】・【2】を実施すれば、離婚歴は削減されます。
※離婚歴が消える「転籍」は、本籍を今の本籍地から、他の市区町村に移動させた場合になります。これは「管外転籍」と呼ばれています。
同一市区町村内で、本籍地を移動させても、本籍の欄が訂正されるだけで、離婚歴はそのまま残りますのでご注意下さい。
離婚歴が消える理由
戸籍の手続きは、戸籍法や戸籍法施行規則に手続きが定められていますが、その中には、戸籍を移転させる際に、旧戸籍から新戸籍に転記しなければならない項目(本名・生年月日等)と転記は移転申請者の判断に任されている「任意的記載事項外」があり、離婚歴はその任意的記載事項外に該当するため、新戸籍に記載するかしないかは、移転申請者の判断に任されているため、記載することを希望しなければ、転籍をすれば、離婚歴が消えることになるのです。
子供がいる場合、転籍・分籍をしても離婚歴が見えてしまう
子供がいる場合は、お子さんの父・母の氏名が、戸籍に記載されるため、転籍を行っても、子供の戸籍から、婚姻の事実と配偶者の名前などが紐解かれてしまいます。
また、以前の本籍地を遡って調査をされると離婚歴は知られてしまいますので、完璧なものではありません。
分籍の方法
分籍とは、文字通り、戸籍を分け、独立することです。
「戸籍筆頭者とその配偶者以外の成年に達した方」であれば、今まで所属していた戸籍から、分離して新しい戸籍を作成することができます。
女性(除籍された配偶者)の場合
離婚届を出すと、一旦はご両親の戸籍に戻ることになります。この時点では、まだ離婚歴は戸籍から消えていません。
両親の戸籍に戻った後、分籍の申請をし、元の戸籍と異なる本籍地で、異なった姓(旧姓)で申請を行えば、離婚歴は削減されます(新しい戸籍に転記されません)。
尚、未婚の女性が分籍を行うと、周囲から、バツイチの疑いを掛けられることが多々ありますので、ご注意下さい。
男性の場合
通常、男性が戸籍筆頭者となっていると思われますので、分籍はできません。転籍の方法でご対応下さい。
離婚歴やバツイチがバレてしまう理由
自治体は、遺産相続などに備えて、過去の戸籍記録を遡り、親族血縁関係を明らかにできるように記録を保存しています。
近年はプライバシー保護の観点から、取得が制限されるようになりましたが、正当な理由があれば本人や法的関係者でなくても取得は可能となっております。そのため、離婚を完璧に隠すことは不可能と考えられます。
原戸籍や除籍謄本には離婚の記録が残る
転籍を行い、離婚歴を新しい戸籍謄本から消すことはできても、元の本籍地には除籍簿(=除籍謄本:戸籍内の全員が除籍されたり転籍して、戸籍簿から除籍簿に移された謄本)として、過去の履歴が記録されています。
分籍を行っても、原戸籍(改製される前の戸籍)が残っており、過去の身分関係を確認できるようになっています。
そのため、以前の本籍地で原戸籍や除籍謄本を取得されてしまうと、離婚歴を知られてしまいます。尚、他人の除籍謄本を勝手に取得することはできません。除籍謄本を調査するためには、弁護士や司法書士に依頼することが必要であるため、そこまで気に掛けることはないかも知れません。
新しい戸籍にも転籍の記録が残る
新しい戸籍にも、転籍した旨が記録されます。そのため、新しい戸籍を詳しく閲覧された場合、疑われる可能性があります。
詐欺罪や虚偽記載の可能性も
転籍・分籍後の新しい戸籍を証拠に「結婚歴なし」と主張すると詐欺罪や虚偽記載となるので、ご注意下さい。
住民票から離婚歴を消す方法
離婚をされた方が、「世帯全員」、かつ「転出者」を含んだ住民票を請求した場合、旧姓の記載や、同居人欄に元配偶者(元妻・元夫)の名前がバツ印が付いた状態で記載されます。
住民票から離婚歴や前妻をわからなくする方法は、以下の通りです。
引越しによる離婚暦の消去
- まず、確認のために「現在の世帯員全員」の住民票を請求します。するとまだ配偶者の名前がバツ印が付いた状態で記載されいるはずです。
- 次に他の自治体(市区町村)へ引越しを行い、住民票も移動させます。元々住んでいた自治体では、住民票は除票となります。法改正前は5年間の保存期間ののち破棄されましたが、法改正後は150年間の保存期間になりました。
- 新しい住所地では、住民票は新しく作り直されるため、住民票に旧姓や元配偶者の名前は、記載はされていないはずです。
- その後、元の自治体(市区町村)へ引越しを行い、住民票も移動させます(元に戻す)。元の自治体でも、新しく住民票が作り直されるため、こちらにも、旧姓や元配偶者の名前は記載されていません。
住民票には、1つ前の住所地が記載されています。そのため、元の住所を辿って、元住んでいた自治体で、住民票の除票を取得された場合、離婚暦を把握される可能性があります。しかしながら、通常は除票を調べたりすることはなく、疑われている場合も1回や2回程度しか、辿らないと思われるため、複数回の住民票の移動を行えば、住民票の離婚歴が発覚することはないと思われます。
住民票改製による離婚暦の消去
現在住んでいるの自治体に依頼して住民票を改製してもらいます。但し、改製の理由が乏しいので、実施してもらえるかは、役所の考えによります。
そのため、同一市町村内で複数回、引越し、転居届を出し、一番最初にある住所欄を一杯にし、役所に新しく住民票を作り直してもらうことがいいかも知れません。
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