プライム事件:暴力団担当警官の住民票を不正取得、司法書士ら逮捕

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暴力団捜査担当警官の住民票を不正取得、司法書士ら逮捕

プライム事件の概要

 プライム事件とは、2011年(平成23年)11月に発覚した戸籍等の個人情報が大量に不正取得されていた一連の事件のこと。

 プライム総合法務事務所を介して、不特定多数の探偵事務所等から依頼を受けた司法書士らが「職務上請求用紙」を偽造し、全国で戸籍・住民票等の不正入手をしていたという事件である。2008年11月以降、本事件で不正取得された戸籍等は1~2万件に及ぶと推測されている。

 プライム総合法務事務所の関係者の逮捕ではじまり、本事件では、調査会社、携帯電話会社、ハローワーク、国交省技官、行政職員、警察官、電力会社派遣社員など、各方面から個人情報を不正に取得している犯罪集団の存在が明るみに出ている。

市町村による解説及び注意喚起も行われている

プライム事件

逮捕者

 暴力団捜査を担当する愛知県警の警察官を含む7人の戸籍謄本や住民票の写しを偽造書類を使って不正に取得したとして、愛知県警捜査4課などは2011年11月11日、司法書士や元弁護士ら5人を偽造有印私文書行使、戸籍法違反、住民基本台帳法違反などの疑いで逮捕した。

逮捕されたのは、以下の5名。

1.東京都千代田区にある、司法書士事務所「プライム総合法務事務所」経営、奈須賢二(51)=東京都中野区中野2
2.探偵会社「ガルエージェンシー東名横浜」代表、粟野貞和(62)=神奈川県横浜市青葉区市ケ尾町
3.司法書士、佐藤隆(50)=東京都練馬区中村北3:2012年(平成24年)年7月18日実刑判決
4.元弁護士、長谷川豊司(48)=東京都世田谷区成城8
5.グラフィックデザイナー、杉山雅典(54)=京都府八幡市=の5容疑者。
※ 佐藤容疑者は一部容疑を否認し、ほか4人は認めている。

逮捕容疑

 5人の逮捕容疑は共謀して2010年3~7月に計9回、司法書士が本人の了承なく住民票などを取得できる、佐藤容疑者の名で手に入れた司法書士会指定の「職務上請求書」を偽造し、架空の依頼人名を記入し、愛知県名古屋市内の区役所などに郵送。

 愛知県名古屋市在住の50代の男性警察官や名古屋市内の女性(47)ら7人の戸籍謄本や住民票の写しを無断で不正に取得した疑い。尚、被害にあった7人のうち2人は愛知県警の警察官で、1人は山口組弘道会絡みの捜査に関わっていた。

逮捕容疑

 愛知県警捜査4課によれば、司法書士事務所側から山口組系暴力団の関連企業に2千万円弱が流れており、愛知県警は奈須、粟野両容疑者の事務所と指定暴力団山口組系の関連企業との間に資金のつながりがあることをつかんでおり、暴力団の資金源になっていた疑いもあるとみて関連を調べている。

戸籍情報等の不正入手ルート

 プライム総合法務事務所により、司法書士が特権として使用する、偽造された「職務上請求書」は計2万枚とみられ(5人は2008年11月から計2万枚を偽造)、うち半数の1万枚近くが関東や中部地方などの各地の役所に提出され、不正取得した戸籍情報は少なくとも1万件に上るとされる。

 7人以外の住民票などの不正取得・身辺調査などにも使われた疑いがあるとされ、全国各地の探偵事務所や調査会社が、ガルエージェンシー東名横浜に住民票等の不正取得依頼を行い、そこから更に、住民票等の写し1件につき約1万円(1件5千~1万5千円)でプライム総合法務事務所に委託を言う行うルートが業界内に確立していたとみている。司法書士の佐藤容疑者は毎月20万~30万円の報酬で名義を貸していた。

行政書士名義でも不正入手

 また、プライム総合法務事務所は、行政書士名義でも他人の戸籍を入手していた。当初、偽造された職務上請求用紙は司法書士用だったが、発覚を恐れ、逮捕された司法書士が行政書士の資格ももっていたことから、行政書士名義の請求用紙も偽造し、使用していた。

 東京都行政書士会によると、佐藤容疑者が入会したのは2011年3月。「行政書士プライム総合法務事務所」を開設したと届け出て、2011年4月には東京都行政書士会指定の「職務上請求書」を50枚買っていた。2011年4月以降、行政書士の身分でも佐藤容疑者の名義で戸籍謄本などが取得されたことが確認できたという。

デザイナーが職務上請求書の控えを偽造

 弁護士や司法書士など8業士は、職務上請求用紙で戸籍謄本等を取得することができるが、この用紙には不正使用を抑止のために通し番号がついており、どの番号の用紙を誰に渡したか、それぞれの会で把握できるようになっています。

 また、大量不正使用できないよう、現在では、一度に購入できる用紙は100部となっており、元の職務上請求書の控えを司法書士会等に提出しなければ、次の用紙を購入できない制度になっている。そのためで、本事件では、八幡市のデザイナーに依頼をし、職務上請求書を偽造していました。

有印私文書偽造や住民基本台帳法違反などの疑いで再逮捕

 愛知県警捜査員らの戸籍情報が不正に取得された事件に関連し、5人は11月11日に逮捕されたが、名古屋地検は2011年12月2日、最初の逮捕容疑についてはいったん処分保留で釈放。
愛知県警はその直後に、別の愛知県尾張地方のパート女性の住民票を不正取得したなどとして、奈須賢二容疑者(51)ら5人を、有印私文書偽造や住民基本台帳法違反などの疑いで再逮捕した。
5人は共謀し、2010年9月、東京司法書士会名義の(発行の)請求書を大阪府内の印刷会社で1万枚印刷(偽造)。翌月2010年10月、「財産分与のため」などと虚偽の申請理由を書いて、愛知県尾張地方の市役所に提出し、パート女性(51)の住民票の写しを不正に取得した疑い。佐藤容疑者は「偽造したものと知らなかった」と一部否認し、ほか4人は容疑を認めているという。
該当女性は自身の個人情報が無断で取得されたことに気付いていなかったとみられ、愛知県警は他の犯罪に悪用されていなかったか調べる方針。愛知県警によると、女性は勝手に住民票を取られたことを知らず、「思い当たる節もない」という。

3年間で計1億円前後の利益

 愛知県警は、グループは戸籍情報の不正取得で、3年間で計1億円前後の利益を得たとみており、法務事務所経営者は1億5,700万円、探偵会社代表は7,800万円もの利益を得ていました。

 更に、取得の依頼料は、プライム総合法務事務所が直接受け取らず、ペーパーカンパニーとみられる会社を経由させ、金の流れを複雑にしていたことが、愛知県警の捜査でわかっている。

浮気調査に使われていた

 プライム総合法務事務所の社長の証言によれば、「不正取得した戸籍などの個人情報のうち、85%から90%は結婚相手と浮気調査に使われていた」と証言されている。

 また、全国各地で起きている「同和地区問い合わせ事件」とも関連し、そのほとんどが結婚相手の身元調査に使われている可能性が高いと推測されている。

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