Q. 人名用漢字に登録されていない漢字(5200号通達)を戸籍に登録する方法を教えて下さい。

判例/法令/用語解説

戸籍の名前に使えない漢字を使いたい場合は

 人名に使える文字は、常用漢字、人名用漢字及び平仮名・片仮名になります。国が定める戸籍法により、戸籍に登録できる漢字は一定のものに制限されており、国が指定した漢字以外は、名前として戸籍に登録することができません。

 戸籍の管理は、地方自治体に事務が委任されていることから、運用もその市町村区によって異なる場合があるため、実際に届出を出す予定の窓口ではどうなのか確認してみるのも良いと思われます。

 しかしながら、戸籍法第1条で地方自治体に事務が委任されているものの、戸籍法第3条での記載どおり、国の管轄分野であり、市町村長の裁量の余地はないとされています。

※例外をページ下部に記載しております。

常用漢字以外で戸籍の名前に使える文字

 戸籍法第50条に「子の名には、常用平易な文字を用いなければならない。」と記載されており、その「常用平易な文字」は、戸籍法施行規則第60条に、以下の3点と規定されております。

(1)昭和56年内閣告示第1号常用漢字表に掲げる漢字
  ⇒常用漢字表(法務省HP⇒文化庁HP)pdfファイル

(2)別表第2に掲げる漢字
  ⇒人名用漢字表(法務省HP※指定フォントが入っていない場合閲覧不可)pdfファイル

(3)片仮名又は平仮名(変体仮名を除く)」
(参考1)法務省:子の名に使える漢字の説明HP
(参考2)戸籍法施行規則

5200号通達とは

氏又は名の記載に用いる文字の取り扱いに関する通達等の整理について

 平成2年10月20日付けの法務省民事局第2課第5200号通達(氏又は名の記載に用いる文字の取り扱いに関する通達等の整理について)という通達があり、戸籍に記載されている氏又は名の文字の俗字等の取扱いなどを定めています。

正字/俗字/誤字とは

 5200号通達には、戸籍に記載する氏名の文字の取り扱いについて定めた通達で何が俗字で誤字であるかを定義している「誤字俗字・正字一覧表」があり、誤字は戸籍に新たな記載をする際には使用できないことになっています。戸籍に限らず、登記簿謄本や定款、規則などに誤字俗字が使用されている場合においても5200号通達に基づいて訂正することが一般化しています。特に昭和初期以前に作られた謄本や定款の変更などを役所に提出する場合には修正が必要になります。

(1)正字とは、常用漢字表などに掲載されている社会一般において正しいとされる文字になります。

(2)俗字とは、習慣によって用いられている文字であり、漢和辞典などで俗字として掲載されている物で、当人からの申請があれば正字に置き換えることが出来るとされています。

(3)誤字とは、正字と俗字のどちらにも属さない文字であり、戸籍に誤字が記載されている場合には、当人の申請が無くとも役所の職権において、訂正し、正字に置き換えることが出来ることが通達に明記されています。尚、変更した場合は事後承諾で当人に通知することになっています。

例外:「琉」が認められた

裁判による不服申し立てで、新たな漢字が使える可能性も

 通常は、上記の5200号通達に従った文字のみ、戸籍用の文字として認められていますが、認められていなかった文字、沖縄の別称として親しまれている「琉球」の「琉」の字が裁判により、認められた事例があります。

 沖縄県のある夫妻は、「琉」の字を長男の名前とする出生届を拒否されたため、那覇家庭裁判所に不服申し立てを行いました。

 那覇家庭裁判所は、1997年11月18日に申し立てを認め、那覇市長に出生届の受理を命じる判決を出ました。当該那覇家庭裁判所の判決後、国は戸籍法を改正し、「琉」の一字だけ、戸籍に登録できる漢字として追加しました。

 このように、時間は少し掛かるかもしれませんが、どうしても、この名前を。。。と思っていらっしゃる方の最後の頼みの綱として、家庭裁判所に申立をする方法もあるようです。

人名用漢字:常用漢字(主に中学校で習う字)以外の文字とその異体字

丑丞乃之乎也云亘‐亙些亦亥亨亮仔伊伍伽佃佑伶侃侑俄俠俣俐倭俱倦倖偲傭儲允兎兜其冴凌凜‐凛凧凪凰凱函劉劫勁勺勿匁匡廿卜卯卿厨厩叉叡叢叶只吾吞吻哉哨啄哩喬喧喰喋嘩嘉嘗噌噂圃圭坐尭‐堯坦埴堰堺堵塙壕壬夷奄奎套娃姪姥娩嬉孟宏宋宕宥寅寓寵尖尤屑峨峻崚嵯嵩嶺巌‐巖已巳巴巷巽帖幌幡庄庇庚庵廟廻弘弛彗彦彪彬徠忽怜恢恰恕悌惟惚悉惇惹惺惣慧憐戊或戟托按挺挽掬捲捷捺捧掠揃摑摺撒撰撞播撫擢孜敦斐斡斧斯於旭昂昊昏昌昴晏晃‐晄晒晋晟晦晨智暉暢曙曝曳朋朔杏杖杜李杭杵杷枇柑柴柘柊柏柾柚桧‐檜栞桔桂栖桐栗梧梓梢梛梯桶梶椛梁棲椋椀楯楚楕椿楠楓椰楢楊榎樺榊榛槙‐槇槍槌樫槻樟樋橘樽橙檎檀櫂櫛櫓欣欽歎此殆毅毘毬汀汝汐汲沌沓沫洸洲洵洛浩浬淵淳渚‐渚淀淋渥湘湊湛溢滉溜漱漕漣澪濡瀕灘灸灼烏焰焚煌煤煉熙燕燎燦燭燿爾牒牟牡牽犀狼猪‐猪獅玖珂珈珊珀玲琢‐琢琉瑛琥琶琵琳瑚瑞瑶瑳瓜瓢甥甫畠畢疋疏皐皓眸瞥矩砦砥砧硯碓碗碩碧磐磯祇祢‐禰祐‐祐祷‐禱禄‐祿禎‐禎禽禾秦秤稀稔稟稜穣‐穰穹穿窄窪窺竣竪竺竿笈笹笙笠筈筑箕箔篇篠簞簾籾粥粟糊紘紗紐絃紬絆絢綺綜綴緋綾綸縞徽繫繡纂纏羚翔翠耀而耶耽聡肇肋肴胤胡脩腔脹膏臥舜舵芥芹芭芙芦苑茄苔苺茅茉茸茜莞荻莫莉菅菫菖萄菩萌‐萠萊菱葦葵萱葺萩董葡蓑蒔蒐蒼蒲蒙蓉蓮蔭蔣蔦蓬蔓蕎蕨蕉蕃蕪薙蕾蕗藁薩蘇蘭蝦蝶螺蟬蟹蠟衿袈袴裡裟裳襖訊訣註詢詫誼諏諄諒謂諺讃豹貰賑赳跨蹄蹟輔輯輿轟辰辻迂迄辿迪迦這逞逗逢遥‐遙遁遼邑祁郁鄭酉醇醐醍醬釉釘釧銑鋒鋸錘錐錆錫鍬鎧閃閏閤阿陀隈隼雀雁雛雫霞靖鞄鞍鞘鞠鞭頁頌頗顚颯饗馨馴馳駕駿驍魁魯鮎鯉鯛鰯鱒鱗鳩鳶鳳鴨鴻鵜鵬鷗鷲鷺鷹麒麟麿黎黛鼎
注「‐」は、相互の漢字が同一の字種であることを示している。

人名用漢字:常用漢字の異体字

亞(亜) 惡(悪) 爲(為) 逸(逸) 榮(栄) 衞(衛) 謁(謁) 圓(円) 緣(縁) 薗(園) 應(応) 櫻(桜) 奧(奥) 橫(横) 溫(温) 價(価) 禍(禍) 悔(悔) 海(海) 壞(壊) 懷(懐) 樂(楽) 渴(渇) 卷(巻) 陷(陥) 寬(寛) 漢(漢) 氣(気) 祈(祈) 器(器) 僞(偽) 戲(戯) 虛(虚) 峽(峡) 狹(狭) 響(響) 曉(暁) 勤(勤) 謹(謹) 駈(駆) 勳(勲) 薰(薫) 惠(恵) 揭(掲) 鷄(鶏) 藝(芸) 擊(撃) 縣(県) 儉(倹) 劍(剣) 險(険) 圈(圏) 檢(検) 顯(顕) 驗(験) 嚴(厳) 廣(広) 恆(恒) 黃(黄) 國(国) 黑(黒) 穀(穀) 碎(砕) 雜(雑) 祉(祉) 視(視) 兒(児) 濕(湿) 實(実) 社(社) 者(者) 煮(煮) 壽(寿) 收(収) 臭(臭) 從(従) 澁(渋) 獸(獣) 縱(縦) 祝(祝) 暑(暑) 署(署) 緖(緒) 諸(諸) 敍(叙) 將(将) 祥(祥) 涉(渉) 燒(焼) 奬(奨) 條(条) 狀(状) 乘(乗) 淨(浄) 剩(剰) 疊(畳) 孃(嬢) 讓(譲) 釀(醸) 神(神) 眞(真) 寢(寝) 愼(慎) 盡(尽) 粹(粋) 醉(酔) 穗(穂) 瀨(瀬) 齊(斉) 靜(静) 攝(摂) 節(節) 專(専) 戰(戦) 纖(繊) 禪(禅) 祖(祖) 壯(壮) 爭(争) 莊(荘) 搜(捜) 巢(巣) 曾(曽) 裝(装) 僧(僧) 層(層) 瘦(痩) 騷(騒) 增(増) 憎(憎) 藏(蔵) 贈(贈) 臟(臓) 卽(即) 帶(帯) 滯(滞) 瀧(滝) 單(単) 嘆(嘆) 團(団) 彈(弾) 晝(昼) 鑄(鋳) 著(著) 廳(庁) 徵(徴) 聽(聴) 懲(懲) 鎭(鎮) 轉(転) 傳(伝) 都(都) 嶋(島) 燈(灯) 盜(盗) 稻(稲) 德(徳) 突(突) 難(難) 拜(拝) 盃(杯) 賣(売) 梅(梅) 髮(髪) 拔(抜) 繁(繁) 晚(晩) 卑(卑) 祕(秘) 碑(碑) 賓(賓) 敏(敏) 冨(富) 侮(侮) 福(福) 拂(払) 佛(仏) 勉(勉) 步(歩) 峯(峰) 墨(墨) 飜(翻) 每(毎) 萬(万) 默(黙) 埜(野) 彌(弥) 藥(薬) 與(与) 搖(揺) 樣(様) 謠(謡) 來(来) 賴(頼) 覽(覧) 欄(欄) 龍(竜) 虜(虜) 凉(涼) 綠(緑) 淚(涙) 壘(塁) 類(類) 禮(礼) 曆(暦) 歷(歴) 練(練) 鍊(錬) 郞(郎) 朗(朗) 廊(廊) 錄(録)
注:括弧内の漢字は、常用漢字表での字体を示している。

5200号通達と別表の見本

平成2年10月20日付け法務省民二第5200号民事局長通達見本
平成2年10月20日付け法務省民二第5200号民事局長通達見本
平成2年10月20日付け法務省民二第5200号民事局長通達見本
平成2年10月20日付け法務省民二第5200号民事局長通達見本
平成2年10月20日付け法務省民二第5200号民事局長通達見本

5200号通達詳細

 平成2年10月20日付け法務省民二第5200号民事局長通達「氏又は名の記載に用いる文字の取り扱いに関する通達等の整理について」
 平成2年10月20日付け法務省民二第5202号民事局第二課長依命通知「氏又は名の記載に用いる文字の取り扱いに関する通達等の整理について(依命通知)」
 平成2年11月22日付け法務省民二第5300号民事局長通達「氏又は名の記載に用いる文字の取り扱いに関する「誤字・俗字一覧表」について」

戸籍法施行規則別表第二の一(部首順)「子の名に用いることのできる漢字」
戸籍法施行規則別表第二の一の文字のうち,相互に文字更正できない文字(同一字種であるが,異体字の漢字:20字種40字体)
戸籍法施行規則別表第二の二(50音順)
平成2年10月20日付け民二第5200号通達別表 151文字のうち,「文字訂正」も「文字更正」のいずれもできない文字(63文字)
平成2年10月20日付け民二第5200号通達別表 151文字のうち,常用漢字表(通用字体)の文字(括弧が添えられている漢字は括弧外の漢字)に文字更正できる文字(13文字)
平成2年10月20日付け民二第5200号通達別表 151文字のうち,戸籍法施行規則別表第二の一の文字に文字更正できる文字(75文字)
平成2年10月20日付け民二第5200号依命通知別表 「俗字表」

平成6年11月16日付け法務省民二第7005号民事局長通達「「氏又は名の記載に用いる文字の取り扱いに関する通達等の整理について」の一部改正について」
平成6年11月16日付け法務省民二第7006号民事局第二課長依命通知「「氏又は名の記載に用いる文字の取り扱いに関する通達等の整理について(依命通知)」の一部改正について」
平成6年11月16日付け法務省民二第7007号民事局長通達「氏又は名の記載に用いる文字の取り扱いに関する「誤字・俗字一覧表」について」
平成6年11月30日付け法務省民三第8713号民事局長第三課長依命通知「登記名義人の表示の更正の登記等の要否について」
平成7年2月28日付け法務省民二第2000号民事局長通達「申請書等に記載されている氏名の表記の文字が戸籍における表記と同一でない場合の取り扱いについて」
平成16年9月27日付け法務省民一第2664号民事局長通達「出生の届け出における子の名に用いる文字の取り扱いについて」
平成16年9月27日付け法務省民一第2665号民事局長通達「「氏又は名の記載に用いる文字の取り扱いに関する通達等の整理について」の一部改正について」
平成16年9月27日付け法務省民一第2666号民事局第一課長依命通知「「氏又は名の記載に用いる文字の取り扱いに関する通達等の整理について(依命通知)」の一部改正について」
平成16年10月14日付け法務省民一第2842号民事局長通達「氏又は名の記載に用いる文字の取扱いに関する「誤字俗字・正字一覧表」について」
平成16年10月14日付け法務省民二第5300号民事局長通達「氏又は名の記載に用いる文字の取り扱いに関する「誤字・俗字一覧表」について」
平成21年4月30日付け法務省民一第1109号民事局長通達「氏又は名の記載に用いる文字の取り扱いに関する通達等の整理について」の一部改正について」
平成22年11月30日付け法務省民一第2903号民事局長通達「氏又は名の記載に用いる文字の取り扱いに関する通達等の整理について」の一部改正について」
平成22年11月30日付け法務省民一第2905号民事局長通達「氏又は名の記載に用いる文字の取扱いに関する「誤字俗字・正字一覧表」について」の一部改正について
平成22年11月30日付け法務省民一第2913号民事局長第一課長依命通知「「氏又は名の記載に用いる文字の取り扱いに関する通達等の整理について(依命通知)」の一部改正について」

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