自己破産後に免責を得られると、借金は帳消しになり返済の義務はなくなりますが、その際のデメリットや自己破産後の生活を不安に思う方も多いと思います。自己破産後の生活についてのよくある疑問や質問をまとめましたので、是非参考にしてみてください。
信用情報機関からブラックリスト登録され、借入不可になる
5~10年は借り入れができない
自己破産すると、個人信用情報機関(JICC・CIC・KSCなど)に、ブラックリストとして事故情報登録され、5~10年間は借り入れやローンが組めなくなります。
またクレジットカードも解約となり、5年間は新規発行もできなくなり、キャッシングの利用ができなくなります。
更に、10年間は金融機関から住宅ローンなどの融資を受けることが難しくなると言われています。
但し、自己破産後でも、金融機関のキャッシュカードやデビットカードは作れることができ、金融機関からの振り込み、引き落とし等の預貯金に関する取引は通常通り行うことが可能です。
そのため、自己破産後の生活では、家電製品、バイク、旅行など高額商品を購入する場合は、現金一括での支払方法になります。
すべての債権者に自己破産通知が届く
自己破産の手続が開始された場合、債権者が破産手続に参加する機会を平等に確保するために、債権者に対して破産手続開始の決定があったことを知らせる通知(破産法32条3項)を発することとなります。
会社に借金がある場合は、会社にも通知が届く
会社の制度で、従業員に住宅資金や生活資金の貸し出しを行っている場合には、会社も債権者となってしまいます。
その場合、債権者としての会社へ自己破産の通知は届くこととなり、特定の債権者を除外して通知を出すこともできません。
会社や勤務先や知られたくない相手からの借金があり、どうしてもその債権者に知られたくない方は、自己破産は向いていない制度になります。こうした事態を避けるためには、会社への借金は自己破産手続き前には、控えておくとよいでしょう。
退職金がある場合には、会社に通知が届く可能性がある
自己破産の手続きには、直近2か月の給与や源泉徴収票などを提出(破産法20条)する必要があり、退職金制度がある勤務先に務めている場合には、退職金見込み額証明書の写しを提出する必要があります(破産規則14条3号)。
退職金は1/4まで差押えが可能で(民事執行法152条2項)、事前に退職金の見込み額を提出する必要があります。
そのため、退職金制度がある勤務先に事情の説明を行うために、その際に自己破産について知られる可能性があります。
不動産会社や大家に借金がある場合は、通知が届く
家賃に関しては、家賃の滞納額が大きい場合は、滞納家賃も破産手続きで債権として計上し、免責を得ることも可能で、どの場合は、滞納先に自己破産の通知が届くことになります。
賃貸物件に関する家賃の滞納がある場合、支払い免除になると同時に部屋を引き渡すように言及される可能性があります。
新しい賃貸物件に引っ越す場合は、保証会社の審査に通らないことが多いため、事前に弁護士に相談し、破産後の住居も確定させておきましょう。
また、引越しする場合は、子どもの転校、ご近所付き合い、生活の変化など、家族にも影響が発生するため、留意が必要です。
官報に氏名・住所が掲載される
官報への掲載
官報とは、政府が国民に知らせる事項を編集し、毎日刊行する国家の公告文書になります。具体的には以下のサイトで閲覧が可能です。
なお、直近30日分の官報情報(本紙、号外、政府調達等)は、全て無料で閲覧が可能です。
自己破産を行った場合、自分の個人情報が国が発行する機関紙「官報」に掲載されてしまいます。掲載される情報としては、以下になります。
1.氏名
2.住所
3.手続きした裁判所
4.自己破産の事実
しかしながら、官報に自己破産情報が掲載されたとしも、官報は一般の人は見ることがないため、会社や周囲にバレて発覚する恐れはほとんどないはずです。
官報は、特別な機関紙であるたえ、コンビニ・一般書店では販売されておらず、確認している機関としては、金融業者・信用情報機関・市区町村の徴税担当者などの一部の方だけになります。
自己破産者を付け狙う闇金融
官報を閲覧して、闇金融業者が「我々なら貴方でも融資可能です」といった電話やDMを送ってくる場合もあるため、ご注意ください。
自己破産者は、通常、正規の貸金業者から借金ができなくなるため、法外な金利や手数料の名目で勧誘をしてきます。
財産が処分され、資産が没収される
20万円以上の資産と99万円超の現金を失う
自己破産では、家や車など20万円以上の価値のある本人の財産は破産管財人によって処分され、貸金業者などの返済に充てられ、不足する金額の返済義務が免除される仕組みとなっています。
但し、必要最低限の生活必需品(破産法34条3項2号、民事執行法131条1号、2号)や99万円以下の現金(破産法34条3項、民事執行法131条3号、民事執行法施行令1条)は、保有し続けることが可能です。
保有できない資産
・20万円以上の価値がある資産
・99万円を超える現金
・マイホームや土地などの不動産(没収され競売にかけられる)
・自動車
・生命保険などの有価証券
・ゴルフ会員権
処分を免れる可能性のある資産
自己破産で処分される財産の基準は各裁判所によって多少異なるため、以下は、生活必需品として認められて没収を免れる可能性がありますが、心配があれば、事前に中古車査定会社などに査定してもらったり、弁護士に相談をしておくとよいでしょう。
地方に住み、通勤、買い物、子どもの送り迎えなどで車が必須な生活の場合、痛手になりかねません。
・車やバイク(購入後5年以上経過で、売却価値が20万円以下)
・20万円以下の家具や家電
・99万円までの自由財産
積立型の生命保険契約の解約の可能性
解約すると払い戻される解約返戻金が20万円以上になる保険は、解約させられる可能性があります。
年齢や病歴など、解約すると再加入できないケースもあり、破産の対象にならない可能性も幾分かはあるため、弁護士に相談するのがよいでしょう。
携帯電話やネット回線の契約が解約
携帯電話、固定回線、モバイルWiFiは今や生活必需品で、自己破産しても基本的には没収されることなく、引き続き利用できますが、その通信料金が滞納となっている場合、自己破産により契約解除される可能性が高くなります。
携帯電話会社は通常、電気通信事業者協会(TCA)という機関に加盟しており、携帯電話料金の滞納情報はTCAに登録され、加盟している携帯電話会社で情報共有が行われます。
そのため、自己破産前に、料金滞納、分割払い、キャリア決済などは利用しない状態にしておくことが望ましいと思われます。また、TCAに未加盟の格安SIM会社であれば、新規契約できる可能性があります。
保証人や連帯保証人に借金の請求が向かう
自己破産を行った場合、申立てをした本人の支払い義務は無くなりますが、免責の効果は個人ごとに生じるため、保証人や連帯保証人にはその効果が及びません。
そのため、自己破産すると保証人や連帯保証人に債務(借金)の支払い義務が移り、保証人や連帯保証人への残額の一括請求を阻止できないことになります。そして、自己破産を決意した際には、あなたを信じて保証人になってくれた人に、多大な迷惑をかけることになることから、あらかじめその経緯や状況、今後の対応について話し合い、謝罪をしておきましょう。
家族が連帯保証人になっている場合、家族が取り立てを受けることになることから、本人と同時に家族も、自己破産する場合も多くなっています。
なお、奨学金などの債務は、ほぼ必ず家族や親族が連帯保証人になっているため、注意がを払う必要があります。
資格制限・士業・会社役員に1年ほど就業できなくなる
自己破産の手続開始が決定された場合、手続きが終了し、免責を受けるまでの間は、就業が制限される職業や資格があります。
そのため、自己破産の手続き中は、該当する仕事を辞するか、該当する資格ではない仕事で稼ぐ必要があります。
また、会社役員は破産手続きと同時に解任されることになり、士業も、登録が削除され、手続き完了後に再度登録することで、仕事の再開ができます。
自己破産手続き完了後、免責を受けて、「復権」(破産手続による職業制限を解く制度)することができれば、職業・資格の制限が解除されます。
自己破産手続きの完了には、資産のない方で3か月程度、資産のある人は6か月~1年ほど掛かります。
制限を受ける職業一覧
制限を受ける職業は、以下の通りです。
・弁護士
・公認会計士
・税理士
・弁理士
・司法書士
・行政書士
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・土地家屋調査士
・公証人
・後見人
・証券会社外務員
・有価証券投資顧問業者
・商品取引所会員
・生命保険募集人
・旅行業者
・質屋
・古物商
・警備業者
・警備員
・建設業者
・風俗営業
居住制限され、引越しや旅行ができなくなる
財産があり、破産管財人が選任される際の破産手続きの期間中は、居住地が制限され(破産法37条1項)移動や旅行ができなくなりますが、破産手続きの完了後に制限は解除されます。但し、破産手続き中であっても裁判所の許可さえあれば,転居や旅行は可能となっています。
財産があり破産管財人が選任され破産手続きが行われる場合は、長期間の旅行、転居などは裁判所の許可が必要になります。
郵便物も管理され、自分に届かなくなる
財産があり、破産管財人が選任される際の破産手続きの期間中は、郵便物や個人宛の封筒も破産管財人に管理・開封されることになり、郵便物は破産管財人に転送されることになります(破産法81条1項)。
尚、破産手続きが終了次第、制限は解除されます。
自己破産できない場合や免責で免除されない借金がある
自己破産を裁判所に申し立てても、認められない場合もあります。自己破産が認められるには、裁判所の審査を通過する必要があります。
借金額が年収の1/3を超えている場合、借金が少額でも、病気で働けない場合、会社をリストラされた場合、生活保護以外に収入がない場合には、「返済できないほどの借金」と裁判所から認められる可能性が高くなります。
これ以外でも、自己破産が認められない場合があります。
自己破産が認められない条件(免責不許可事由の例)
正当な理由なで借金を抱えた人は、自己破産で救済の対象とならず、免責が許可されない場合があり、これは「免責不許可事由」と呼ばれています。
免責不可自由の例
・財産を隠している場合
・詐欺行為をした場合
・浪費やギャンブルで借金ができた場合
・前に自己破産の免責から7年が経過していない場合
自己破産が認められない条件(非免責債権)
自己破産の手続きが完了した場合でも、以下に当てはまる債権は、「非免責債権」と呼ばれ、返済が免除されず、支払いの義務が残ることとなります。
非免責債権の例
・所得税などの税金
・養育費や慰謝料
・破産申立時に故意に記載しなかった借金
・他人の生命、身体を侵害したことによる不法行為の損害賠償債務